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第13回 RIPS 秋季公開セミナー2014「集団的自衛権と日本の選択」

 2014年9月23日(水)、秋季公開セミナーの第1日目として、講師に元自衛艦隊司令官の香田洋二氏をお招きし、「集団的自衛権と武力行使事態―現場が抱える課題」と題する講演を行いました。

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 2014年7月1日の臨時閣議による集団的自衛権の行使を認める閣議決定が行われて以来、多様な観点から集団的自衛権行使に関する議論がなされているなか、香田氏は、元自衛艦隊司令官という経験から、集団的自衛権の議論が観念論ではなく実情を踏まえた本質論をすることが必要であると説かれました。その中で、政府が与党協議の中で15事例を提示しているが、実際にはこのどれにも当てはまらない事態が生じる場合にはどうするのかという議論が抜けていると指摘されました。政治は集団的自衛権の是非という大局的な観点からの議論をすればよく、あとは現場に責任をもつ自衛隊を中心に検討させるべきだとの見解を示されました。さらに現在の議論で提示された事例以外のケースで集団的自衛権を行使することは認めないという状況が生まれることは最悪の結果だと強調されました。また自衛隊が集団的自衛権の行使のもとに米軍を支援する場合に個別的自衛権に基づく防衛出動が下令されていないために国土・国民を守れないという状況が生起する可能性を指摘されました。

 

 10月1日に開催されたセミナー第2日では、焦点を防衛産業に当て、最初に同志社大学副学長の村山裕三教授が基調講演を行いました。
DSC_0840.jpg軍需産業は、米国同時多発テロ後に米国及び欧州諸国ではグローバル化が急速に進んできたのに対し、日本では武器輸出三原則からグローバル化が遅れ、国際的競争力が欠けた状態が続いてきた実状を紹介されました。このような中、今年4月に政府が新たに策定した「防衛装備移転三原則」の導入によって、ようやくグローバル市場に挑戦するための環境が整った今日、日本の特性・特徴を活かした輸出戦略が必要であると説明されました。具体的には、日本が得意とするような素材・部品・生産技術を活用したライセンス生産部品の受注から始めグローバル一括生産へ展開させるグローバル・サプライチェーンでの役割分担戦略や、日本国内で比較的支持が得られやすい平和貢献や国際協力、対テロや感染症対策などの「守る」分野を中心に展開していく提案、また、世界一とされるレンズやガラスの研磨技術などの日本ならではの職人・匠の技術を活かした分野を発展させていく提案などを挙げられました。同時に、これらの産業を促進するためには、「目的外使用」と「第三国移転」を防ぐ対策が急務であること、また、産業を促進するための法整備、更に、企業側による従来の防衛省市場のみに依存してきた文化からの脱却などの課題を指摘されました。同時に、日本の防衛技術、特に民生分野に対する海外からの注目度は確実に高まっており、今後の日本の軍需産業発展のための「幕は切って落とされた」と捉えるべきか、と会場のみなさんに問われる形で終えられました。

 

 基調講演に続き、西山氏(元三菱重工・未来工学研究所)の司会の下、4名のパネリストに登壇していただき、討議を行いました。

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 浅利氏(クライシス・インテリジェンス社代表)は、2014年パリで開催された世界最大規模の軍事・セキュリティー展示会「ユーロサトリ2014」の日本ブースを企画・運営した経験から、現在の日本軍需産業の課題について発表されました。特に、現代の国際安全保障環境は激変しているなか、防衛・犯罪・環境・防災などの境目がなくなりつつあり、これらの技術は相互に汎用でき、特に防災・災害救援で活用できる技術に日本の技術は注目され始めていると指摘されました。同時に、企業側には発注者に即時に対応できる体制や外国語能力などの課題も挙げられました。山崎氏(ロッキードマーチンGI社顧問)は、防衛装備移転三原則の体制下、産業促進のためには、防衛省を中心として、輸出戦略の策定、情報流出防止への対策、秘密特許制度の制定を含む、長期的な戦略及び法的枠組み作りに取り組む重要性を述べられました。及川氏(社団法人・発明協会副会長)も今後の武器輸出制度についての課題を述べられ、特に防衛装備移転三原則の解釈や運用の制約範囲が抽象的であること、また、輸出相手国の防衛器管理や防衛装備品政策に対する制度・運営についての情報が不足していることなどを指摘されました。最後にケビン・メア(元米国務省日本部長)は、防衛装備移転三原則の導入はこれまで制度上不可能であった日本企業による在日米軍支援の可能性が高まりつつある点に触れ、在日米軍のミサイルや航空機の整備が日本国内で実施可能となれば、厳しい米国防衛予算のより効果的な使用、同時に日本の関連産業を促進し、日米同盟の深化・抑止力の強化につながると説明されました。そのためには、防衛省を中心とした政府による軍需製品輸出を保証できるシステムづくりが必須であると述べられました。

 同セミナーには1日目、2日目とも約80名の方に参加頂き、集団的自衛権及び防衛産業の理解を深める貴重な機会を持つことができました。ご参加頂きました皆様に、あらためて御礼申し上げます。

参 考 情 報

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第1回「集団的自衛権と武力行使事態―現場が抱える課題」

日  時
2014年9月24日(水)
15:00~17:00 (15:00~16:30 講演 / 16:30~17:00 質疑応答
講  演
香田 洋二 氏 (元 海上自衛隊 自衛艦隊司令官)
会  場
グランドヒル市ヶ谷 瑠璃の間

第2回「防衛装備移転三原則とグローバル化時代の日本の防衛産業」

日  時
2014年10月1日(水) 15:00~18:00
基調講演
村山 裕三 氏 (同志社大学 副学長)
パネル司会
西山 淳一 氏 (元 三菱重工・未来工学研究所)
パネルディスカッション
・「ユーロサトリに見る国際動向と日本の課題」

(浅利 眞 氏 / クライシス・インテリジェンス社 代表)

・「防衛装備新三原則と企業リスク」

(及川 耕造 氏 / 社団法人 日本発明協会 副会長

・「防衛装備新三原則の評価と今後に向けた提言」

(ケビン・メア 氏 / 元 米国務省 日本部長)

・「防衛装備三原則と推進のための諸施策」

(山崎 剛美 氏 / ロッキード・マーチン GI 社 顧問)

会  場
グランドヒル市ヶ谷 白樺の間