去る1月12日にジュネーブで、当研究所は、現地のGeneva Centre for Security Policy (GCSP)と公開シンポジウムを共催した。GCSPはジュネーブで有数のシンクタンクであり、安全保障、国際関係、平和的解決などの分野で研究、教育を行っている機関である。
テーマは「Rising Tensions in East Asia and Japanese Response (東アジアの高まる緊張と日本の対応)」で、基調講演と2つのパネル討論を行った。パネルは、ヨーロッパ、米国および日本からそれぞれ2名の研究者による発表および会場の参加者との活発な質疑応答があり、3時間は瞬く間に過ぎてしまった。
開催日が年始休暇明けであったため、参加者は少ないかもしれないとの事前の予想に反して100名前後の、ジュネーブとしては珍しく多数の参加者を得ることとなり、GCSPも驚いていた。あとで聞いたところでは、ジュネーブでは国際問題を議論する際に中国などを表立って批判することは避ける雰囲気があるとのことであったが、そういう雰囲気の中で我々のシンポジウムが「Rising Tensions in East Asia」と厳しい表現を使ったことで参加者の関心を集めることになったようだ。シンポジウムのあとのレセプションでも、台湾からの一参加者は「中国の軍事的脅威や尖閣諸島の領有主張を率直に批判した会合はジュネーブで初めてだ」と語ってくれた。その意味でも、意義深いシンポジウムとなった。
シンポジウムの内容を仔細に紹介することはできないが、ヨーロッパの討論者の一人は日米などの対北制裁に批判的で対話の重要性を強調して、日米の討論者と見解を異にした。尖閣諸島や竹島も日中、日韓関係の緊張要因として日米欧の討論者から取り上げられた。しかし日米の討論者が、中韓の「法による支配」無視を指摘しても、参加者の反応は鈍かった。ヨーロッパから遠いところの問題だからなのであろう。
日本が東アジアの安全保障問題にどう取り組んでいるかに関しては、これらの会合を通じて引き続きヨーロッパの人たちに語ることは重要だとの認識を新たにした。
平和・安全保障研究所
理事長 西 原 正
(2018年1月29日)